太陽活動の地上での再現に成功
2012年 9月 10日 15 : 05 印刷する
宇宙航空研究開発機構の研究チームはプラズマ実験装置によって,太陽観測衛星「ひので」が明らかにした太陽の彩層(太陽の光球を取り囲む薄い層)で頻発する活動現象と類似の現象を再現させることに成功したと発表しました。
今回の実験では,東京大学の実験装置を用いて装置内に強い磁場にとらえられたドーナツ状のプラズマをつくり,周囲の磁力線と近接させることで磁力線のつなぎ替えを発生させました。その結果,元の1万度から約3万度まで急速に加熱されるガスや,時速2万kmもの速さで吹き出すジェット,そして加熱に伴って発生した磁場の激しいゆれ(波動)などの現象を世界で初めて観測することができたとしています。
この実験により,太陽研究者を悩ませる「コロナ加熱問題」が解決されることが期待されています。「コロナ加熱問題」とは,1500万度もある太陽の中心核の熱が,放射や対流によって表面に伝わって光球では6000度に下がるのが,そこを過ぎると逆に表面から遠ざかるほど高温になり,コロナ(彩層の外側の薄いガスの層)では100万度を超えるという,熱源から離れるほど温度が上がる不思議な現象です。
磁場の激しいゆれが磁力線のつなぎ替えに伴って発生することを直接的に突き止めたことは,コロナ加熱の有力な仮説のひとつである「コロナ波動加熱説」において,コロナの加熱源と考えられている磁場のゆれがどのように発生するのかを示すものだそうです。
話は変わりますが,このコロナの中で起こるフレアと呼ばれる爆発現象があります。その際によく現れる「フィラメント」と呼ばれる現象を,NASAの太陽観察衛星「Solar Dynamics Observatory」が捉えました。 フィラメントとは、約200万度の熱いコロナに浮かぶ1万度程度の比較的冷たく,細長い形をしている物質で,フレアの起源を調べるに当たって研究者に注目されています。
下の動画の8月31日に観測されたフィラメントは巨大で,太陽から伸びだしたフィラメントがはじける様子が観てとれます。太陽の大きさから比べても驚く大きさで,その活動の激しさを伺わせます。
このフィラメントの放出時に発生したコロナによって,地球では9月3日にオーロラが観測されたそうです。