農工大/トクヤマ,世界トップレベル性能の深紫外LEDを開発

2013年 1月 16日 18 : 26 印刷する

東京農工大学とトクヤマは,世界トップレベルの出力特性を持つ深紫外LEDの作成に成功しました。現在深紫外の光源として用いられている水銀ランプは,環境負荷や省エネの観点から今後代替が進むと考えられており、その点からもこの成果は注目されるものです。トクヤマは本年中にユーザ評価を開始し,2015年度までの事業化を目指すとしています。

深紫外を波長域とするLEDを作成するには,AlNとGaNの混晶であるAlGaN薄膜結晶の成長が最大のキーポイントとなります。一般のLEDはサファイア結晶基板上で発光層の成長を行ないますが,AlGaN薄膜をサファイア基板上で同様に成長させようとしても,格子定数の違いから欠陥(転移)が発生し,素子寿命が短くなると共に発光効率も低くなるという弱点があります。

一方AlGaNと格子定数が近い基板として窒化アルミニウム(AlN)があり,これを用いることで転移の少ない結晶の成長が期待できますが,一般に入手できるAlN基板は昇華法によって作成されているもので,これは基板中の不純物が多く,光吸収が大きいために素子から光を取り出すことができません。

そこで研究グループは,転移が少ないAlNを用いながら光吸収の無い基板を作成するため,独自にHVPE法による結晶成長法を開発しました。HVPE法は全ての材料をガスで供給して結晶成長させる手法で,高純度の結晶を高速で成長させることが可能です。しかしAlを含む材料に適用すると生成されたAlClが石英製の炉を還元損傷することから,かつては実現不可能とされていました。

 

 

 

 

 

 

 

この問題に対し農工大は2002年,石英と反応しない塩化物として3塩化アルミニウム(AlC3)ガスを用いると炉が還元損傷を受けないことを見出だし,この成果をもとに2003年にはトクヤマと深紫外LED向けAlN単結晶基板の開発研究をスタートさせます。そして2011年に昇華法AlN基板上にHVPE法で成長させたAlN厚膜を剥離することで,紫外光の高い透過率と低転移密度を両立した,実用レベルのAlN基板の作成に成功。2012年にこれを用いた260nm帯UV-C LEDを試作,世界トップレベルの出力特性を確認しました。

 

 

 

 

 

 

 

研究チームは今後,深紫外線を用いた殺ウィルス機構の解明と応用や,「光」ストレスを用いた植物育成の応用などを進めていきたいとしています。

この記者会見の模様は動画(No1No2No3No4No5)に収録しています。

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